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2022年8月 第9回総会報告
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2021年 第8回 | 総会 |
1.目的
IEEJプロフェッショナルの活動についての方針を決定するとともに意見交換を行う。また個人会員およびパートナー会員と電気学会幹部と交流して情報交換を行い、IEEJプロフェッショナル活動の活性化を図る。
2.日時 2021年8月23日(月)14時~16時
3.方式 Zoomによるオンライン
4.参加者
(1)IEEJプロフェッショナル個人会員、パートナー会員
(2)電気学会
大崎博之会長、藤原昇専務理事、中谷竜二総務企画理事、佐々木敏男技術者教育担当
5.議事
(1) 主催者挨拶(佐野光夫IEEJプロフェッショナル会代表)
(2) 活動報告及び審議(佐藤幹事長司会)
① 2020年度会計報告及び活動報告
② 審議事項 役員の選出
(3)お話・深尾 正(IEEJプロフェッショナル)
(4)招待者紹介
主賓挨拶(大崎博之電気学会会長)
6.講演 岩本伸一(IEEJプロフェッショナル)
「2050年カーボンニュートラルへ向けて-再エネ大量導入問題を中心に」
講演概要
「2050年カーボンニュートラルへ向けて-再エネ大量導入問題を中心に」
1.再生可能エネルギー導入と電力系統の状況
日本で、2018年度の再生可能エネルギーが総発電量(kWh)に占める割合は約17%である。2030年度の再生可能エネルギーの目標率は36-38%となっており、原子力の目標率20-22%と合わせて、トータルで59%をノンカーボンにするのが我が国の目標である。再生可能エネルギーの設備容量(kW)も急速に伸びている。
これは、国の政策であるFIT(固定価格買取制度)が大きな役割を果たしているが、そのための国民負担である賦課金もどんどん上昇しており、現在、電気料金の約11%が再エネ普及のための賦課金となっている。例えば、自分の電気代が約20000円とすると、約2200円を再エネ導入のために払っていることになる。
再生可能エネルギー大量導入には、2つの制約がある。1つ目は局所的制約であり、2つ目は大域的制約である。大域的制約には、電力系統全体での需要-供給バランスに起因する周波数問題があり、特に電力会社間連系の弱い日本では重要な問題となっている。再エネ拡大に特に重要になるのは、大域的制約である。電力系統は、周波数一定のために需給バランスをとる必要がある。すなわち、需要に等しい発電を時々刻々供給しなければならないと周波数は一定に保てない。例えば、太陽光発電が無い夜から朝にかけては火力発電の出力を制御し、太陽光発電がある昼間は太陽光発電出力を勘定に入れて需要に合わせて火力発電の出力を制御しなければならない。東京電力管内では、周波数は50Hzである。周波数は発電機の回転数に比例しているので、いつも一定という訳ではない。周波数が下がりすぎると、保護リレー装置UFR: Under Frequency Relay(周波数低下リレー)が働き、遮断器(ブレーカー)が作動し、強制的な停電が発生する。同じように、再生可能エネルギーが入りすぎると、周波数の維持が困難になる。そのため、我が国では、再生可能エネルギーが各電力会社の接続可能量を超える前は、再生可能エネルギーを補償なしに30日抑制することが可能(※FIT法改正後の申込については、時間制で抑制することが可能)で、接続可能量を超えた場合は、補償なしに再生可能エネルギーを無制限で抑制をすることが可能というルールが作られた。それでも、再エネ連系は急速に伸びている。
2.九州における再生可能エネルギー大量導入による課題
九州電力管内では、周波数偏差目標はプラスマイナス0.2Hz である。我が国では、再生可能エネルギーを大量に導入するために、再生可能エネルギーを優遇する優先給電が決められた。すなわち、火力発電は出力下限まで下げ、揚水機も夜でなく昼に負荷として使うようにというものである。揚水機は、上池と下池を持ち、従来は、電力需要の少ない夜間にモーター負荷として下池から上池に水をくみ上げ、電力利用が多い昼間に上池から下池に水を落として発電するものであった。優先給電では、この揚水機を昼間にモーター負荷として使うようにということである。
例えば、2016年5月4日の九州電力の需給と供給のバランスを見ると、日中の太陽光・風力出力の13時実績は需要の66%であり、2018年4月29日には需要の81%が再生可能エネルギーであった。これらゴールデンウイーク時には、揚水機は従来とは逆の運転がなされた。九州電力は、再エネの出力制御(抑制)をしないよう、本州への連系線電力潮流を最大にし、火力発電機出力を下限まで下げ、全ての揚水機を、日中(夜間でなく)モーター負荷として運転したが、2018年10月に本土で最初の再生エネルギーの出力制御(抑制)を行った。再生可能エネルギーの増加が主な理由である。
九州電力のケースでの教訓は以下の通りである。再エネによる周波数問題の解決に、揚水発電機は調整力として非常に有用である。ただ、今から作る場所・会社があるか疑問である。揚水機の設置が困難な場合、蓄電池も有用であるが、長い時間(6-8時間)使えないといけない。九州と本州または四国との間での新しい連系線建設が望まれる。
3.北海道における大停電時の再生可能エネルギー問題
2018年9月6日午前3時7分に、北海道にて震度7の地震が起こった。複数の発電機が連続して停止して停電が起こり、午前3:25に最終的に北海道が全停電となった。すべての再生可能エネルギーが、周波数が限界設定値(49-47Hz)に達した時に解列した。
今回、再生可能エネルギーは、事故による停電時には有用でなく、復旧に時間がかかった。電源の位置的バランスが良くなかった。(2020年4月後の発送電分離後ではもっとそうなると考えられる)。特記すべきことは、再生可能エネルギーの接続復帰に蓄電池が大きな役割を果たしたことである。
北海道での教訓は以下の通りである。 再生可能エネルギーは周波数低下ですべて解列し、大停電時に役立たなかった。再生可能エネルギーの周波数リレーの設定値をより低くする必要がある。蓄電池が再生可能エネルギーの接続復帰に役立つ。
4.これからの問題
電力会社間連系線の増強でより多くの再生可能エネルギー導入が可能である。 現時点では、日本では、電力会社間の連系線の数とその容量が少ない (元来、主に緊急時の融通用に建設された)。現在、以下の増強がなされている。北海道-東北間は1ルート(直流)→ 2ルートへ増強、東北-東京間は1ルート(交流) → 2ルートへ増強中、東京-中部間は直流120万kW → 210万kWへ増強、九州-中国間は1ルート(2回線) → 2ルート化への議論があったが 見送りに。
よく比較されるドイツとの違いは何であろうか? ドイツは7か国と国際連系線を持っていて、再エネに 対する周波数維持が容易である。日本は、国際連系線がないため周波数維持が難しい。
先日、スウェーデンの少女グレタさんが、地球温暖化防止のために早急にCO2を 削減しなければならないのに、皆、何をしているの?と訴えたが、これに解決策はあるのだろうか?実は、水力発電、再エネ発電、そして、原子力発電の負荷追随運転を可能にすれば、理論的には可能である。世界的には、福島第1のような事故を起こさない小型炉の開発が進んでいる。
再エネ100%でやっていくことは可能かと聞かれるが、前述の周波数維持の問題があるので現実的には無理である。 回転する発電機で周波数が保たれている。 回転する発電機をどれだけ削減できるかが、 現時点で世界的な問題として注目されている。再エネ大量導入で重要なことは、日本国民にとって、何が一番重要かをいつも考えることである。
以上