IEEJプロフェッショナル制度創設の目的・目標と今後の期待
2014.8.19 深尾 正
IEEJプロフェッショナル制度が発足して10年になろうとしている。認定者の数に関しては当初の目標を残念ながら達成していないが,当初は期待していなかった多くの成果が得られてきているのは各位のご尽力の賜である。10年を迎えるにあたって,この制度の発端,制度設計にあたって留意した点などを述べて,この制度をより深くご理解いただき,ますます活動が活発になることを期待したい。
1.発端 以下の課題の解決のために1990年中頃から新制度の検討・調査を開始した。
・企業・大学等を退職された会員の引き留め(平成10~14年度 毎年200~400名が退会された)
・団塊世代の一斉退職による技術の継承問題,技術者不足の深刻化(いわゆる2007年問題)
・電力・電気機器が専門の教員の不足・大学講師候補者難(情報技術者養成のため学科改変)
・若者の理科離れ・特に電気離れ
目標:企業・大学などで第一ステップの活動を終えられた会員の第二の活躍の場となり,電気学会の社会貢献を担っていただく制度を作る。
2.制度設計にあたって留意した事柄
制約条件:電気学会の定款の範囲内
人材活用の内容:人材派遣業に該当しない事業
採算性:学会組織を大きくしない,独立採算を目標
学会活動の領域の拡大(社会貢献の活発化)のための課題解決(従来の学会活動は会員が対象であったが,中小企業支援,小中高生への理科教育支援など会員外を対象にする活動での課題):学会事務局では営業活動に限界,不祥事対策の必要。
3.制度提案時の学会理事会でのご意見,学会外からいただいたアドバイス
(財)横浜産業振興公社,マイウエイテクノサービス(株)[当時]には相談に乗っていただき,多くのご提案をいただいた。それらの中で最も重要な項目のいくつかは以下のとおりである。
・学会は仲人役であり,経済的な負担とならない範囲で会員増に結び付けたい(2003.12.10理事会)
・学会は人材を紹介することとし,リエゾンの機能は振興公社にお願いする(2004.2.10常任理事会)
・中小企業支援(小中高生の理科教育支援も含む学会会員外に対する)事業を行う場合には,実行組織は電気学会の組織外に別組織(たとえばNPO)を作るべき(2004.12.24横浜産業振興公社)
・制度のネーミングは重要である,IEEJProfessional制度 など(同上)
・営業活動,リエゾン機能を担う組織として「パートナー」を導入(マイウエイテクノサービス)
4.発足までの主な事項
2003.6.26 常任理事会:平成15年度事業計画「企業等の第一線を退かれた会員の活用」提案
2003.12.10 理事会:「電気学会指導技術者制度」承認を前提としてWG構成が承認
2004.11電気学会誌にアンケート用紙同封(2005.1.19 集計 576名から回答 HP に掲載)
2005.4.21 理事会:①「会員の知識・経験流通サービス」を電気学会のサービスとして運用開始を承認,②IEEJパートナーとして,マイウエイテクノサービス(株)を認定する,(2007.4.25日刊工業新聞社を認定) ③事業収支2年目以降,単年度黒字化を目指す
2005.4.25 「IEEJプロフェッショナル制度」(会員の知識・経験流通サービス)スタート
2005.7.20理事会 24名のIEEJプロフェッショナル認定
5. IEEJプロフェッショナル申請勧誘とプロの活躍先の発掘活動
多くの会員にIEEJプロフェッショナルになっていただくためには,活躍先を開拓する必要があるが,逆に,活躍先を探すにあたっては,まず,IEEJプロを増やす必要がある。鶏と卵の関係である。
IEEJプロの活躍の場は大きく公的組織と民間組織の2つに分けられる。前者は電気学会が窓口になることを要求されるのが普通と考えられる。本稿ではまず電気学会が窓口,あるいは学会に新たな制度を作って実施した,あるいは,している活動,次項ではIEEJプロ独自の活動について述べる。
i. 武蔵村山市での中学校理科支援(2006.9.22初回打ち合わせ)
2007.6.12 第二中学校での理科教育支援開始,2007.12.23朝日新聞に掲載,電気新聞他にも。
2012年度末まで実施。
ii.高等教育支援
・2005.9.9 大学の講義請負制度について提案。2007.1.15「専門科目の開講状況に関するアンケート」を電気系学科のある大学に調査依頼。2007.3.31活動報告書を提出。
・2009年度から寄付講義を実施。
・2008.1.28-30「電気法規及び施設管理講師養成講座開設」:IEEJプロを対象に電気学会事務局で,電気学会発行図書「電気施設管理と電気法規解説」の執筆者を講師として実施,
iii. 中小企業支援
・2003.11.11 東京都立産業技術研究所(現:東京都立産業技術研究センター)所長にIEEJプロ制度の説明をし,中小企業支援の共同事業の可能性を伺う。
2006.2.21 東京都立産業技術研究センターとの連携セミナ開催
6.IEEJプロフェッショナル独自の活動 組織的な活動の主な経緯は以下のとおりである。
2006.3.16 電気学会全国大会での談話室第1回開催 横浜国立大学 現在も継続
2008.4.25 IEEJプロフェッショナル懇談会発足
電気学会の組織には属さないIEEJプロの情報交換の場で,定例会を1カ月おきに開催,他に見学会・幹事会を開催。ホームページ:http://trial.ieejprofessional.net/
2009.8.23 IEEJプロフェッショナル総会 第1回開催 本年は第6回目である。
2010.11.10 関西地区懇談会発足
IEEJプロフェッショナル個々の活動は電気学会のIEEJプロフェッショナル制度のホームページにある活動実績をご覧いただきたい。特に,多くのIEEJプロが制度発足当時から子供たちを対象にした理科教育支援を行ってきており,多くの成果を上げている。今年度は,第三級アマチュア無線技士講習会と修了試験を行った。以下のホームページをご覧いただきたい。
電気理科クラブ http://members3.jcom.home.ne.jp/denkirikaclub/
7.IEEJプロフェッショナル制度の基本理念と今後の期待
IEEJプロフェッショナル制度は,電気学会,IEEJプロフェッショナルの倫理規定に則って,個人の責任において,教育支援や中小企業支援などの事業や活動を,電気学会の制約を受けずに,自由にできるようにすることを狙った制度である。
現在はまだ,関東地区の活動が主であるが,認定者数を増やして,各地域に懇談会や理科クラブが作られ,これらが連携を取って活動が活性化されることを,大いに期待している。
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