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大震災後の電力・エネルギーに関する教育と日本での電力エネルギー状況

大震災後の電力・エネルギーに関するエンジニアリング教育例と
日本での電源構成の課題
2021年1月27日
                                                      IEEJプロフェッショナル
白川晋吾
1. まえがき
 日本の電力技術は2011大震災前には500kV、800kV、1,000kV送変電技術・原発開発に関して、韓国、中国に対して技術供与の時代であった。ところが、2011年3月11日14:46東北太平洋側沖4地域連動型大地震が発生,41分後15:27に福島第一原発(1~4号機,5,6号機)に大津波が侵入,福島第一原発1~4 号機は爆発損壊・放射線線量汚染が発生(5,6号機は冷温停止)、日本の電力は激変の時代を体験した。電力エネルギーに関するエンジニアリング教育を小生なりの視点で2011~2018年度に実践、学生の反応を求めてきた。この約10年間の電力・エネルギー関連の諸事象、福島第一原発事故事象を含めて学ぶところは多く、日本の将来の電源構成のあり方を議論することは意義がある。

2. 大震災後の電力・エネルギーに関するエンジニアリング教育例
 2011年の大震災後、電力・エネルギーに関するエンジニアリング教育をして来た。東京理科大学理工学部電子電気情報工学科「電気機器製図」「電気機械設計」において、約10年間、4年後期学生の対面授業で文献を読み、図面を作成し、現象の理解を深めることにより、教育実践をしてきた。演題テーマと受講時対面授業で得られた学生の反応は下記に示す。
 演題テーマ:A.2011年大震災M9.0・津波、B.福島第一原発事故事象、C.原子炉循環注水冷却システム構築、D.新規制基準と柏崎刈羽原発、E.火力発電、F.地域エリア間の電力連系の増強、G.太陽光発電の大量導入、H.風力発電、I.西日本(九州・関西・四国)での原発再稼働, J.大震災に学ぶ電気学会の役割と将来に向けて、K.欧州の電力系統。
 対面授業での学生の反応:2011-2018年度での反応例は下記のように列挙される。
「津波は到達してきた後も水位がどんどん上がっていき急に高くなり,凄まじい巨大大津波の破壊力だと思った。・非常用発電機の位置が変わっておれば変わっていたかもしれない。・もしベント(内圧の異常圧力放出)に成功しておれば福島第一原発破壊現象は変わっていたかもしれない。・循環注水システムの配置図を作成してみると,装置は改善されており、すごいことだと思った。・図面を作成することで実際に原発がどこにあるのかを原発の位置の図を書くまで知らなかった。こうして図を書いてみると地方にある原発のおかげで生活ができていることが分った。・火力発電は太陽光出力低下時に電力を供給している。・CO2の回収,貯蓄の技術はとてもおもしろいと感じた。・再生エネルギーを主軸とした電力系統は既存の電力系統と大きく異なるため技術開発も必要となると感じた。・安定供給には16:00以降の代替発電が要。雨水時の代替発電出力が課題。・風力発電では風速の3乗に比例した電力が発生する。安定した風速が要となる。・原子力は事故や故障によるリスクはゼロではない。・自然災害リスク、世界情勢を考慮して原発に対応して行くべき。・西日本地域で2018年、原発は再稼働している。ドイツは福島第一原発事故後、脱原発を表明、廃炉はしているが原発(電源比率約12%分)は継続使用されている。フランス(原発比率75%)は欧州での電力(原発)輸出入の中心であり,やはり原子力は大切だと感じた。事故が起きると一般の人はすぐ使うのをやめようと考えるが,エンジニアはよく検証し、より技術を高めて貢献しようと考える。これは正しいと思う」。

3. 日本での電力エネルギー状況に関して 
 「2050年の温暖化ガス排出実質ゼロ」が2020年10月16日の首相所信表明で行われた。火力発電のCO2排出削減、太陽光、洋上風力の増強、再エネ100%論、電源構成の見直し、2兆円投資等が出ている。2050年の電源比率(総合資源エネルギー調査会分科会2020―12-21参考値):再エネ50-60%、火力化石燃料+原子力30―40%。火力水素アンモニア燃料10%。
(a) 火力発電の温暖化ガス排出CO2削減方法はどのように選ぶべきか?
 世界のエネルギー起源2016(環境省)、CO2排出量によると日本は3.5%で中国の28.2%、米国の15.0%より少ないレベルにある。フランス・ドイツはすべての石炭火力発電所を廃止する方針、インドネシア、ベトナム、タイ、中国、インドなどは石炭火力発電所を運営、大震災後の東日本では福島第一原発、第二原発の代替として高効率大容量石炭火力で電力安定供給が行われている。今後、日本の火力発電所は低効率型から高効率型への転換、水素、アンモニア、バイオマスの混合燃焼、カーボンニュートラルを目指している。
(b) 日本はドイツ・米国と比較し、電源構成をどのようにしていくべきか?
 ①ドイツ(2019年)は再エネ全体46%で、そのうち風力が24.6%、従来電源では石炭29.1%と多く、原子力も12.3%(ドイツ8基11357 MW)で、系統は独仏間が連系されている。メルケル政権後、ドイツは本当に脱原発できるのだろうか。
 ②米国カリフォルニアは再エネ全体48.6%で、太陽光14.2%、風力6.8%、水力19.2%、石炭火力がなくLNG 43%が多い。2020年8月15日にカリフォルニアでは470MW 想定外の電源喪失、1,000MW風力発電の喪失、470MWの計画停電を実施、州全域で約30万所帯が影響を受けた。米国全体の2008~2017年の10年間でみると石炭の割合は約50⇒30%、天然ガスは約20⇒32%に推移している。
 ③日本は2019年再エネ18.6%(水力8.5%、太陽光7.2%、風力0.8%、バイオマス1.9%、地熱0.2%)、石炭31.2%,LNG 34.4%,石油7.1%、原子力6.6%、その他2.1%で再エネの風力が少ない。
 日本の地勢的条件、北欧州の安定した風速6m/sに対して台風・暴風雪・雷襲来の下での安定した風力発電出力維持への懸念はある。東日本では電源の約8割がCO2排出の火力発電に依存、脱炭素時代に火力電源が止まれば立ち行かなくなる。備蓄は日本でLNGは約20日、石炭は200日レベル、原発は核廃棄物の課題はあるが燃料補給なく連続して13ケ月間連続運転される。
 ④世界の原発情勢:中国44基/44,636MW(2019年)活況。・ロシア 32基/ 29060MW(トルコ・インド・イランに輸出)。・韓国24基/ 22,695MW、UAEで1基/1390 MWが2020年稼働開始。・フランス58基/ 65880MW、・米国99基/103560MW(新型炉2基建設中、一部廃炉、20基は20年間使用延長)。
・日本は新規制基準で大震災前56基から32基/31,594MWに整備。
 ⑤大停電による被害例:2018 年 9 月 6 日 M6.7 地震による全域停電により北海道で約 1574 憶円の被害が生じている。
 ⑥電力エリア間の電力融通の増強、50 Hz /60Hz 間の連系強化。
 ⑦電源構成の選択には発電設備容量に関して、発電設備利用率の考慮が重要、火力発電約80%、 太陽光発電約12%、風力発電約40%(8m/s)、原発57-81%(米国原発設備利用率90%)。

4.まとめ
 電力は国民生活の基本、約20兆円/年の産業である。電源構成に関して、石炭火力廃止・再エネ100%論の行き過ぎによって、大停電に見舞われ、経済的大損害に陥るような状況を避ける必要がある。―人々が多様性を求めるように、発電方法の多様性の選択が必要―