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講演3:レジリエントな電力供給システム

レジリエントな電力供給システム

奈 良  宏 一 
IEEJプロフェッショナル
茨城大学 名誉教授、福島工業高等専門学校 名誉教授

1.Resilientとは?
 “resilient”とは、「外力で変形された後、元に戻る能力」すなわち回復力のことをいう。電力分野に対しては、例えば、米国エネルギー省では、電力供給側の立場から、“The ability of a power system and its components to withstand and adapt to disruptions and rapidly recover from them.”として定義されている。すなわち、電力システムとその構成要素が外部からの破壊力に耐え、回復する能力とされている。日本国内でも、ここ数年に、地震や台風による大規模停電が続発したことから、特に、注目されてきている。本年6月の電気事業法改正では、電力供給をレジリエントにする目的で配電事業やアグリゲータが法律に明記され、緊急時に再エネ電源を利用して電力供給を継続可能な法体系の整備がなされている。

2.高柔軟・高信頼電気エネルギー流通システム(FRIENDS)
 今から四半世紀前、国内の大学研究者グループから、新しい形態のレジリエントな電力流通システムFRIENDS(Flexible , Reliable and Intelligent Energy Delivery System)の提案があった。このシステムは、多数台の再エネ電源の系統連系、品質別電力供給、省エネルギー、緊急時の自立グリッド運転などを目的とする。これらの目的を達成するために、電力改質センター(QCC: Power Quality Control Center)と呼ばれる多数のマイクログリッドを面的に相互連系した形の配電システムを構成し、QCCでは多品質の電力を作って需要家に供給できる。QCCは、工業地域、商業地域、住宅地域などによって必要な機能を提供するためにその回路構成は異なるが、配電用変電所から地中化された配電線でネットワーク状に接続される。国内のすべての架空配電線(約225万km)を地中化するためには、kmあたりの単価が 5.3億円 (国交省試算)として約1,200兆円(GDPの2年分)と多額の費用がかかるが、電力供給レジリエンスは強化される。
 FRIENDSにはシステム全体を制御するために必要箇所に制御装置とそれを結ぶ通信回線が準備され、それらを用いた需要家側制御(Demand Response)、自動検針・課金、電気設備運用等のコンサルティング、ホームセキュリティ・オートメーション、再エネ発電用気象予測・設備運用サービスなどの新しいサービスの提供も可能となる。一方、災害対応型モデルでは、避難所、学校、病院、各種公共施設などにQCCを設置して地中配電線ネットワークで結び、平常時には電力系統からの電力供給を受け、緊急時には、各施設のQCC単独の自立運転を、配電線が利用できる場合には複数QCCの連系運用を行って信頼性高く電力供給が可能になる。
 FRIENDSのQCCは2004~2008年にNEDOプロジェクトとして仙台の東北福祉大学で実証試験が行われ、その後、実運用時の2011年3月の東日本大震災による仙台地区の長期停電時において、必要な電力供給を継続できたことが知られている。
FRIENDSの全ての機能を可能とするシステムの実現のためには、まだ、低価格蓄電池、低損失サイリスタ、自律分散制御手法の確立などの技術開発の他、様々な制度改革を必要としている。
以上