配電システムにおける情報化の国内外の技術動向(概要)
IEEJプロフェッショナル
佐 野 光 夫
1.情報化の経緯
■ 電力系統の需要家端を担う配電網は、近年社会の様々な変化や要請に対応し、急速に情報化が進展している。その始まりは1990年代に、供給信頼度の向上や現地作業の省力化等を指向した、配電線開閉器の遠隔監視制御による配電自動化システムの導入である。
その後、地球温暖化対策の重要性が顕在化し、再生可能エネルギーによる分散型電源が配電網に大量に連係されるようになると、配電自動化システムに配電網内の電圧・電流情報を取り込んだ高度化が進められるようになった。
■ さらに至近では、電力全面自由化や省エネ意識の醸成を骨子とした電力システム改革の方針に沿い、従来の誘導型電力量計に代わるスマートメータが開発され、その拡充により一層の情報化が進展するようになった。
■ このような動向は海外でも配電網のスマート化として積極的に推進されており、特にスマートメータの取り付けにおいては、そのビッグデータの取り扱い等の制度面も含め我国よりやや先行している状況にある。しかし開閉器の遠隔監視制御等のシステムは、配電網の電圧や系統構成の相違、経済合理性等から適用は少数である。
2.情報の伝送方式
■ 配電自動化システムにおける配電網内の情報伝送は、当初は配電線搬送や通信線により行われたが、システムの高度化から情報量の増大に対応し光通信方式に切り替わりつつある。
■ スマートメータの場合は、メータ~柱上の中継器(コンセントレータ)間は無線マルチホップ方式、中継器から電力会社サーバーまでは光通信NWで構成される。
3.情報化による主要拡充機能
■ 配電自動化システムにおいては、
・配電線開閉器の遠隔監視制御による事故区間自動区分、配電線の需給調整
・配電網内電圧、電流の遠方計測
等の機能が実現しており、将来的にはこれらの情報を活用し、電圧調整制御、事故予知等への展開も期待されている。
■ スマートメータシステムは、
・電力量(順・逆方向)の30分毎の積算値の計測・保存
・瞬時電力、電流値の計測
・現地検針に代わる遠隔検針(インターバル検針)
・アンペアブレーカ機能、遠隔負荷開閉機能
・HEMS等宅内機器への情報提供
等の機能を有しており、電力自由化における同時同量計測、需要家へのデータ提供等が既に実施されている。
■ スマートメータから得られるデータは、我国では個人情報保護の観点から第三者の使用は禁止されているが、海外では電力会社の設備管理や停電の確認等はもちろん、諾名加工したデータを様々な分野で活用する事も進められている。
4.今後の展開
配電網おいては、頻発する自然災害による大規模停電事故への適切な対応が、喫緊の課題となっており、新たな情報化が求められるものと思われる。
また情報化に関連する技術革新が近年急速に進展し、配電網自体の変革と相まって、IoTやAI等の技術シーズの導入による次世代配電システムの構築が期待されている。
以 上