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2018年定例会講演概要

定例会報告「ドイツのエネルギー変革」

IEEJプロフェッショナル 佐藤信利

2018220

 

ドイツは再生可能エネルギーを大量に取り入れ、原子力発電を2022年までに廃止する決断をし、国家政策としてそれを実現すべく努力を積み重ねてきている。その成果として、2015年には温室効果ガスを1990年比で27.2%削減し、再生可能エネルギーの電力供給比率を29.5%まで伸ばしてきている。

日本では、このドイツの成果は隣国の原子力発電主体のフランスから電気を買っているから実現できているとか、再生可能エネルギーの変動は電力品質の低下を招いている、電気料金への不満が渦巻いているとの批判がある。

この報告では、ドイツ内外で発表されているデータをもとに、日本と比較しつつ、説明した。ドイツは地球温暖化対策を次世代の先進工業立国の実現を目指した国家戦略の中心に据え、エネルギー効率の向上、再生可能エネルギーによるエネルギーの自立、エネルギー節約的な国民経済を実現することにより、国民の福祉に貢献する社会を実現しようとしている。その他の先進国でも、地球温暖化ガスを抑制するためエネルギー効率を改善しつつある国は、経済成長も実現している国が多くある。日本では、地球温暖化対策が発展を阻害することのようにも受け取られ、相変わらずエネルギーの多消費社会で温室効果ガスの絶対値の削減にも消極的である。このままでは、日本は世界の潮流に完全に乗り遅れる危険性があると感じられる。

以下に、調査結果の概要を記す。

1.温室効果ガスの削減(図1参照)
ドイツは着実に地球温暖化ガスを減らして来ている。日本は経済の成り行きそのもので、一貫した政策の下に努力しているようには見えない。このグラフが、日本の取り組みの遅れを如実に表していると思う。

ドレスデン情報ファイル(http://www.de-info.net/kiso/atomdata11.html

 

 

2.再生可能エネルギーの普及
ドイツは再生可能エネルギーの普及のため、系統への接続は優先して行われ、需給調整での出力抑制では既存の化石燃料発電を真っ先に出力抑制し、再生可能エネルギーは可能な限り接続する運用を行っている。再生可能エネルギーを効率よく使うために送電線の増設も計画・推進している。

3.電力の品質の向上
変動型エネルギーである太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギーが電力発電量の30%を超えるところまで普及が進んでいるが、電力品質の指標の一つである各戸当たりの停電時間は2006年21.53分であったのが、2015年には13分となり、日本の平均時間21分よりも良い結果となっている。変動型電源を制御可能としてきたことの証である。

4.電気料金の上昇
電気料金は、再生可能エネルギーの導入と卸売価格が低下すると賦課で上がるメカニズムによって上昇してきている。しかし国民は電力料金の値上りにもかかわらず、この政策に高い支持(60%以上)を与えている。これは、十分な説明が国から国民へなされている証であると考えられる。

5.電力輸出
再生可能エネルギーの導入により、卸電気料金は家庭用電力料金と逆に下がってきていて、欧州の中では最大の輸出国となっている。輸出先は、オーストリア、フランス、オランダなどである。原子力は度重なる安全対策等で決して安い電力ではなくなってきている。

6.電力コスト(卸売価格)の国際比較
家庭用電気料金は日本よりも明らかに高い。しかし産業用電力価格は日本より安いことが、経産省の国際比較データでも明らかである。ここで留意すべきは、ドイツの電力の卸売価格であり、発電コストが殆ど発生しない再生可能エネルギーの普及の結果、ドイツの電力の卸売価格は日本よりも安くなっている。将来賦課金が低くなれば、低廉な電力が普及することとなり、産業競争力は一段と強くなることが予想される。(日本では今のエネルギーミックスでは高いまま推移しそうである)。

 

出典:資源エネルギー庁「エネルギー白書2017」より

 

7.原子力発電について
ドイツは「エネルギーに関する倫理委員会」で議論した結果として、「使用済み核燃料が原子力発電から何の恩恵も受けない次の世代に負の遺産として引き継がれることは、再生可能エネルギーという代替え手段が有る現状では、継続することは倫理に外れる行為であるとのことで、2022年までに停止する。当初原子力推進派であったメルケル首相も、先進技術を有する日本で原子力事故が起きたことはドイツでも起こりうるということで脱原発を決断した。

 

地球温暖化対策は、エネルギーにかかわることではあるが、それを実現するためには、エネルギーシステムは勿論のこと、省エネルギーの観点からはライフスタイルの変革、生産方式の変革とそれを実現する技術開発等を伴うビッグプロジェクトである。日本も積極的に参加し、再び世界に貢献する国になって欲しいと思うのが、この調査からの忌憚のない感想である。

以上