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2017年セミナー講演会講演要旨


工場内電力ケーブルのECSO(電線太径化)設計
  -待ったなしの地球環境問題の解決に向けて

博士(工学) 益尾 和彦(元住友電気工業(株))


 発電所→需要家端→電気機器に至るまでに大量の電線・ケーブルが使われているが、その電線の導体サイズを大きくすることで、通電による電力損失が低減できる。この考えに基づいた‘ECSO(電線の太径化)’に、節電、省エネ、CO2削減の観点から注目が集まっている。この‘ECSO’とはIEC規格の呼称(注)で日本発の技術であり、経済性のほか新たに環境(CO2排出)を考慮に入れた最適導体サイズの決定理論である。すでに2012年のIEC/TC20の東京大会でECSOの国際規格(IEC)化の承認が得られ、2018年制定見込みで現在その制定作業が大詰めを迎えている。
(注)ECSO:Enviromental & Economical Conductor Size Optimization 
 一方、国内では、2014年にECSOのJCS規格が制定され、2016年には、ECSOが内線規程の改定で取り入れられた。

発電所から需要家端までの電力会社所管の送配電線・ケーブルで生じる電力損失は毎年電気事業連合会より発表されており、それによると、1951年から1995年においては、25.3%→5.5% と目覚ましい損失低減が図られてきたことがわかる。これは、送配電線の超高圧化、力率の調整、長距離直流海底ケーブルの導入など、電力会社を中心に取られた様々な対応策が功を奏した結果である。ただし、2000年代に入ってから、特に最近の10年間では5% 前後を横這いに推移しており、ほぼ限界に近いことがわかる。
一方、需要家構内(工場・ビル)の低圧CVTケーブル配線で生じる電力損失について、(一社)日本電線工業会と(一社)電線総合技術センターとによる試算の結果によると、年間の日本全国総電力損失量は約420億kWhであり、日本全国の発電所で発電される総発電電力量が9,238億kWh(2012年度実績)であることより、ロス率は (420/9,238)×100 =4.5 % (約4%) となる。東日本大震災以降の電力供給量逼迫に伴い、需要家サイドの節電・省エネの動き、さらにはネガワットの考え方が広がり始め、必然的に需要家構内(工場,ビル)の電線で生じる電力損失にも注目が集まっている中で、このロス率=4% は予想外に大きい値として受け止められている。
  このロス率を低減するための対応策として考えられるのが、ECSO(電線太径化)である。試算では、ECSOを日本全国に展開したときの総電力損失低減量は、約210億kWhと推定している。これより、ロス率では、現状の4.5%(約4% )から {(420―210)/9,238}×100=2.3%(約2% ) にまで低減できることになる。(図1 参照)

上記のとおりECSOを日本全国に展開したときの総電力損失低減量は約210億kWhと推定したが、その電力損失分の無駄な電力を発電しなくて済むので、発電時に発生するCO2排出量の低減につながる。試算の結果、日本全国総CO2排出削減量は11.6 [百万t] であり、京都議定書の基準年度(1990年)における日本全国総CO2排出量が1,261百万t (環境省データ) であることより、それの (11.6/1,261)×100=0.92 % ≒0.9% に相当する。

最後にECSOの初めての適用実績を紹介する。図2 はメガソーラー発電所構内の直流配線に使用される電線の‘太さ(サイズ)’に応じて、通電により生じる電力損失(配線ロス)がどのように変化するかを比較したもので、「良いサイズ選定(ECSO)」を行うと「標準的なサイズ選定」や「悪いサイズ選定」に比べ、大幅に配線ロスを低減できることを示したものである。
以上