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人工知能の技術開発と問題点 -最適化・判断の自動化-

森脇 紀彦 (日立製作所)

 
1. 人工知能開発の課題と解決のアプローチ
・人間の認識能力の限界
大量データを有効活用するためには単に計算能力やストレージ容量といった技術課題のみならず人間とコンピュータの役割の再定義を伴う。つまり従来のように人間が最初に仮説を立てて必要なデータを集め、仮説の検証を試みるアプローチでは大規模かつ更新頻度の高いデータの十分な活用が困難となる。また、社会や企業が解くべき課題自体も複合化かつ複雑化してきており、分野の専門家であっても精緻な予測モデルを組み立てる方法自体に対して、認識能力の限界が来る。今後は、データとコンピュータを最大限に活用することにより、人間が解くべき課題(高めるべきアウトカム)を設定し、コンピュータが大量の仮説生成を自動化し、データ主導型で解決策を見出す、というアプローチが有効になると考える。
・Hitachi AI Technology /Hの基本原理
Hitachi AI Technology /H(以下、AT/H)は、顧客価値となる目的指標(KPI等)を改善するために、何をどうしたらよいかの施策を大規模データから帰納的に導出する分析エンジンである。業務プロセスを精緻にモデル化して積み上げるのではなく、アウトカムをデータ主導型でモデリングすることに着目している。AT/Hの原理を図1に示す。AT/Hの入力としては、経営効果として高めたい、もしくは低減させたいアウトカム(売上、生産性、設計バグ、サービス離脱、等)、および、このアウトカムに影響を及ぼし得るデータを数値テーブル形式で入力する。
 AT/Hの内部では、入力データの網羅的な組合せを生成して組合せ特徴量を膨大に生成し、この特徴量とアウトカムとの関係を総当たり計算することによりデータに潜む複雑な相関性を統計処理によって発見する。
 

AT/Hの出力となるのは、アウトカムと組合せ特徴量との相関関係を説明する方程式である。この方程式を最適化関数とし、アウトカム改善の試作設計や実行提供手段と併せて業務システムや制御システムに組み込むことによって、環境変動やオーダが変化した場合においてもデータに追従してアウトカムの継続的な向上が実現できる。
2. 適用事例
AT/Hが出力するアウトカムに関する方程式を最適化関数として利用し、様々な業務システムや制御システムの複雑課題を数理的な最適化問題に帰着することによって適応型のシステムや自動改善システムが実現できる。営業店舗、物流倉庫、プラント等への適用事例を図2に示す。

 

3.まとめ、今後の課題
本稿では、日立が提唱する人工知能AT/Hのコンセプトと基本原理、および既存システム知能化の可能性について述べた。AT/Hは、高めるべきアウトカムを指定しその変動に起因し得るデータを入力することでシステムの最適化・判断を自動化できる。今後、システムが暴走する可能性等に十分に配慮しつつ、システムの更なるインテリジェント化を追求していく。