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電気鉄道とAI(概要)

松岡 孝一*,持永 芳文 (IEEJプロフェッショナル)

 
1.まえがき
 19世紀の直流発電機および電動機の発明、発展により実用化した電気鉄道は130年余りの歴史を有し、その時代、時代の最新の技術を導入して、発展、普及して行った。ここでは、電気鉄道発展の歴史を辿り、鉄道における電力供給及び車両制御の変遷と運転自動化の現状を紹介する。
2.電気鉄道と電力供給システムの変遷
<2・1>電気鉄道の誕生  鉄道の動力は蒸気機関から始まり、1825年にイギリスで鉄道が開業した。その後直流電動機と発電機が実用化され、1881年にベルリン近郊で路面電車が営業運転を開始した。日本では1895年に京都電気鉄道が直流500Vで路面電車の営業運転を開始した。当時は電力会社からの電力供給が不安定であったため、各鉄道会社は自営の発電所から電力を供給した。
<2・2>直流き電方式の進展  輸送量の増加に伴い、電気鉄道は600V、750V、1200V、1500Vと順次昇圧されて行った。太平洋戦争中は電化が停滞したが、戦後急速に電化が進められた。自営発電所での直流発電からスタートした電力供給はその後、電動発電機、回転変流機、水銀整流器、そしてシリコン整流器へと進展して行った。シリコン整流器は信頼性、保守性、制御操作性に優れ、無人運転の変電所の実現に大きく寄与した。
<2・3>交流き電方式の進展  日本では1950年頃より交流電化の検討が進められ、1957年に仙山線及び北陸線本線が単相交流20kVで電化された。これにはBTき電方式が採用された。その後ATき電方式が開発され、山陽新幹線新大阪~博多間に用いられて、標準方式となっている。
<2・4>多数変電所の集中監視制御  1955年に国鉄で3300kmの幹線電化計画が策定され、単位変電所の採用と、これらを統合した多数変電所の集中制御方式が開発され、変電所の無人化が可能となった。その後トランジスタを用いた遠方制御装置が開発された。1967年には電子計算機の導入が始まった。                                      
3.電気車制御技術の変遷
 主電動機およびその駆動・制御回路は主回路と呼ばれ、初期の抵抗器とスイッチによる簡単な方式から、最近の電力用半導体デバイスとコンピュータによる高度な方式へと進化して行った。それにより大幅な省エネルギー化と車両性能の向上が達成された。主電動機の方式も、直流電動機から、インバータ制御の交流電動機に置き換わり、大幅な省力化が達成されただけでなく、主電動機の小形・軽量化と出力向上が得られた。交流電動機として誘導電動機が主流であるが、さらに省エネで小形・軽量となる永久磁石同期電動機の導入も進んでいる。
<3・1>直流電動機の抵抗制御方式  
<3・2>サイリスタ制御の導入  
<3・3>直流電動機から誘導電動機へ  
<3・4>永久磁石同期電動機の導入  
<3・5>制御技術の高度化(空転・滑走再粘着制御)  鉄道はレール・車輪間の摩擦係数が小さいため、空転・滑走が発生しやすく、再粘着制御が行われている。制御技術の高度化により、期待粘着係数が向上している。

4.自動運転
<4・1>鉄道の保安システム  鉄道は信号システムによって安全が保たれており、運転士は地上に設置された信号機の表示に従って運転する。
<4・2>自動列車制御装置(ATC)  新幹線の様な高速鉄道や大都市近郊の高密度運転線区では、運転士の信号確認による保安には限界があり、車内信号によるATCが用いられている。
<4・3>自動列車運転装置(ATO)  ATOは乗務員に代わり、列車の出発から停止までを自動で行う運転支援装置である。安全の確保と目標速度の設定のため、上位信号保安装置としてATCを用いている。ATOの本格的実用化は1976年に開業した札幌地下鉄東西線が最初であり、その翌年開業した神戸市営地下鉄西神線でも自動運転が採用された。ワンマン運転を行う路線において、乗務員の負担軽減のため、ATOを採用する事例が増えた。1981年に開業した神戸ポートアイランド線をはじめとする新交通システムにおいては、最初から無人運転を前提に設計されている。
<4・4>ATOの基本的な動き  (1)起動(発車)、(2)加速制御、(3)定速/惰行制御、(4)定位置停止制御(TASC: Train Automatic Stop Control)
<4・5>AI(人口知能)技術の導入  走行時分、乗り心地、停止精度、消費エネルギー等の向上を目的に、AI技術の導入が試みられている。1987年に開業した仙台市地下鉄の自動運転は他に先駆けて予見ファジィ制御を使用した。無人運転が前提の新交通システムにおいては、運転制御エキスパートシステムが採用されている。予測制御を応用したATOシステムの開発も進められている。

5.あとがき
 電気鉄道は各時代の最新の技術を導入して進歩、発展してきた。コンピュータは随所に用いられ、高度な制御が行われている。自動車の自動運転にはAI技術が必須とされるが、ATC装置によって安全が確保されている鉄道においては40年前から自動運転が行われている。AI技術の導入により、更なる乗り心地の向上、省エネルギーが期待される。