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若いエンジニアへ

平成29年電気学会全国大会シンポジウム
「シニアエンジニア」から「若いエンジニア」へ
(人工知能が拓く未来への期待と不安)

 
なぜ今AIなのか? -本シンポジウムの趣旨

IEEJプロフェッショナル  深 川  裕 正

1.IEEJプロフェッショナルと電気学会全国大会シンポジウム
 IEEJプロフェッショナル制度は、今後の人口減少と高齢社会を迎えるに当り、第一線をリタイアする電気学会会員が持つ高度な技術力・専門性を今後も発揮し、社会に貢献することを目的に平成17年度に発足した。
 数年前全国大会に集まった会員から、埋没する「語られざる秘話」を後続のエンジニアに語るシンポジウムを企画しては?との提案があり、東日本大震災後の原発トラブルで、科学技術者への信頼が損なわれたことも勘案し、昨年3月「安全・安心神話からの脱却とリスク教育の重要性」と題するシンポジウムを開催した。今年は進歩著しいAIを取り上げ、若い諸君と討論する場の提供を目的に、本シンポジウムが企画された。
2.AIに関する発表と全体討論の流れ
 学生諸君から摘出されたAIに関する課題を大別すると、以下のようになる。
① AIは仕事を奪うか? 逆にAI時代に要求される人間の能力とは?
② 人材育成としての教育の在り方、特に理系と文系の融合?
③ AIの将来像とされる「強いAI」(人間を超える汎用的人工知能AGI)とは?
① については、仕事を奪うのは、AIやロボットそのものではなく、それらを使う人たちである。SF的未来は別にして、AIが人間と独立し自らの意思を持って働き、人間から仕事を奪うことなどあり得ない。AIが得意とするのは、膨大なデータの検索、整理や分析などである。AIが不得手とする、例えば、相手と交渉したり、決断する能力などに人が関与する余地は十分考えられる。
② について、経済産業省の調査では、先端ITの人材は現在で1.5万人、2020年にはその3倍以上が不足する見通しであるという。データサイエンテイスト等のソフト屋不足の現状を如何に解決して行くのかを議論したい。10年遅いとされるプログラミング授業の初等教育への導入も、多くの対立の末やっと実現されるという。また、最近行われた小・中学生の理数国際テスト(国際教育到達度評価学会)の発表では、日本は全教科ですべて5位以内(67か国中)であったと報告されている。結局、戦後の教育が「異質を排除し、競争を回避する傾向に進んできた」、「高等学校教育から文系と理系に分けるメリットはあるのか?」に尽きるのではないか。
③ について、本物のAIを創造することは人類史上最大の偉業であり、戦争・飢餓・貧困といった極めて困難な問題を解決してくれるかもしれない。しかしその一方で、それがもたらすリスクを回避する手段を講じなければ、AIは人類が成し遂げた「最後の偉業」になってしまう恐れがあるとして、AI搭載の自律ロボット兵器の規制を検討する国連会議が開催され、人間の操作なしに自動で人間を殺傷するロボット兵器の開発禁止を訴える声明が採択された。倫理問題とともに、このことについて議論してみたい。