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2016年セミナー講演会講演概要


高速電気鉄道におけるき電システムの技術的動向

                                   持永芳文  (電気学会IEEJプロフェッショナル)
 
1. 高速鉄道に適した交流電気鉄道の発展
電気鉄道はアジア太平洋戦争後に目覚ましい進歩を遂げており、当初は直流1500V方式が主であったが、輸送需要の増加に伴い、フランスが完成させた交流き電方式を参考に開発を進め、1957年に単相交流20kV方式が仙山線および北陸本線で営業開始した。さらに、1964年に東海道新幹線が単相交流25kV方式で営業開始し、以後、本格的な高速鉄道の時代を迎えている。
 当初の電車は直流電動機を用いていたが、その後、インバータ技術の進展に伴い、誘導電動機が本格的に採用されるようになり、電力回生ブレーキの採用と相まって、電車の軽量化、省エネルギーや保全の簡素化が図られてきた。一方、電車に電力を供給するき電設備についても、受電方式、き電方式、き電回路の電圧の保持や故障検出などに、様々な工夫がされており、最近はパワーエレクトロニクス技術やデジタル制御技術を用いた高度のシステムが実現されている。

2.き電システム(電力供給システム)の変遷
① 交流電車への電力供給システムは、通信線への誘導障害を考慮して帰線電流を極力レールに流さないようにしている。東海道新幹線では吸上変圧器(BT)を用いていたが、BTセクションのアークが難点であり、1972年の山陽新幹線から弱点となるセクションが無く2倍の電圧でき電する単巻変圧器(AT)を用いたき電方式が開発されて、新幹線の標準方式となった。
② 電力会社の電源は三相であり、BTき電方式では2組の単相に変換するスコット結線変圧器が用いられた。山陽新幹線以降のATき電方式ではき電距離が長く負荷が多くなるので、220kV(一部に187kV)以上の超高圧受電となり、受電側の中性点が直接接地できる変形ウッドブリッジ結線変圧器が開発された。しかし、結線が複雑なため簡素化の検討を行い、き電側の巻線を簡素化したルーフ・デルタ結線変圧器を開発し、2010年の東北新幹線(八戸~青森)から実用化した。
③ 東海道新幹線における負荷の増加や整備新幹線で強力な電源が得られないことがあり、パワーエレクトロニクス技術の進歩と相まって、電力変換装置による不平衡補償および電圧変動補償を行う装置の開発を行い、電源の安定化と電車の高速化に寄与している。
④ き電回路の故障検出を行う保護継電器にデジタル技術が取り入れられ、確実な故障検出ができるようになった。故障点標定装置も各種方式が実用化され、迅速な故障点探索が行える。

3.電車線路と高速集電
① 電車の高速化に伴い集電理論が確立され、安定した集電のためには横波の伝搬速度の70%以下で走行する必要性が示された。このためには軽量・高張力の電車線が必要であり、PHC(析出強化銅合金)トロリ線が開発され、東北(北)新幹線以降の整備新幹線で用いられている。
② 電車の集電にシングルアームの低騒音パンタグラフと流線形の低騒音がいしが開発されるとともに、パンタグラフ間の特別高圧母線の引き通しと、パンタグラフの削減が行われている。