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2016年セミナー講演会講演概要

燃料電池の技術動向


津久井 勤(電気学会IEEJプロフェッショナル)


1.概要
 企業や大学に在職中の現役時代には燃料電池を研究の対象にしていた。しかし、定年退職後は別の分野の研究を行っており、しばらく遠ざかっていた。そのため新たに調べ直して、燃料電池の最近の取り組みについて調査した。
 その結果、固体高分子形燃料電池(PEFC)が家庭用や自動車用に目覚ましい普及が行われていることが大きな最近の動向である。これに併せて自動車用の燃料電池の普及によって、水素の普及が見られ、水素製造と水素ステーションの拡大が首都圏を中心に全国規模で推進されていることである。また、今までにも研究開発が行われていた固体酸化物燃料電池(SOFC)が家庭用や業務用に開発が進んでおり、実用化が近いことである。これらの推進にはNEDOプロジェクトがある。
 一方では、盛んに研究が行われ実用化も見られたリン酸形燃料電池(PAFC)が一部の企業を除いて見られなくなったっていることである。また、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)や実用化に近いとみられていたメタノール直接形燃料電池(DMFC)の開発もごく一部を除いて殆ど見られなくなっていることである。
 さらに新たな進展が見られるのは、酵素型バイオ燃料電池と微生物燃料電池の開発推進である。これらは生成物系廃棄物や家庭用の生ごみの処理、排水処理などと併せて発電ができる特徴の見られることである。


2.NEDOプロジェクトとエネルギー基本計画から
1)家庭用燃料電池は60~70万円するコストを2030年には40万円以下にすることと、運転時間の寿命も6万時間から9万時間に延ばすこと。そのためには、高分子電解質膜の耐久性の向上と白金触媒の低減と代替触媒の開発並びにシステムコストの低減を挙げている。これらの対策によって、530万台の需要を見込んでいる。
2)自動車用燃料電池は約100万円するシステムコストを2030年には50万円以下にする計画である。この場合にも上記のコスト低減計画と同じである。
3)固体電解質形燃料電池では連続運転で約4万時間を2030年には9万時間まで延ばすこと、コストも100万円/kWを小容量定置用でも40万円/kW以下にする目標である。そのためには、セルスタック・モジュールの高性能・低コスト化は不可欠となる。併せて、700℃以上の高温運転であるため、排熱利用や大容量ではガスタービンとのコンバインドシステムとしての利用が図れる。
4)水素利用については、まず水素ステーションの拡大とそのコスト低減である。当面の目標は、全国に100カ所整備とコストを3~4億円かかるところを2億円以下にすることと、2030年には水素供給コストを40~60円/Nm重程度まで低減する目標である。


3.酵素型バイオ燃料電池はグルコースの酸化反応と酸素の還元反応を利用している。金電極系を利用した酸化電極を使用して10mA/cm が得られている。また、微生物燃料電池は微生物が有機物を分解したときに発生する電子を利用するもので、廃水処理で発電可能となるのが特徴である。発電菌としてシュワネラ菌やジオバクター菌などが知られている。排水処理と共にリンの回収が可能との報告も見られる。