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シンポジウム講演

米国の電力系統構築における問題点と解決策の一方策

JACK CASAZZA氏の「忘れられたルーツ」(EIT電力発展史研究会 訳補・編)

から学ぶ米国電力産業の浮沈の要因と日本への示唆―


臼田誠次郎(
IEEJプロフェッショナル)

 

米国で技術系電力経営者として活躍され、電力関係で国際的にも活躍されていられるJack Casazza氏が2007年に警世の書として「ForgottenRoots - Electric Power, Profits, Democracy and A Profession」を出版された。この書は電力産業の創始国として発展し、黄金時代を迎え、さらには世界を指導してきた米国が、どのような経緯を経てその輝きを失っていったか、また電力事業の本質とは何か、電力の経営には何が重要か、さらに技術者はどうあるべきか等について警鐘を鳴らした書である。

本格的自由化を迎える我が国として大変参考になるので、本書の内容を紹介し今後の自由化を考える一助としたい。

 

Ⅰカサッザ氏による米国電力産業史の総括 ―エジソンからエンロン迄の120年の浮沈―

 カサッザ氏は現代を石器・青銅器・鉄器時代に次ぐ電気時代と位置付け、次の通り米国電力産業の浮沈を総括した。

 ・エジソンが1882年にニューヨークで世界初の電気事業を開始して以来、米国が世界の電力事業を指導して来た。

 ・特に系統を大連系する「スーパーパワーシステム」の開発により誰でもが安価で信頼性の高い電気を享受出来た。

 ・ニューヨーク大停電、石油ショック、スリーマイル島原発事故、再生エネ高価買取義務等により経営は急激に悪化。

 ・加えて経営者が短期利益の増大に重点を置き始めたため、長期的な設備計画・建設などが難しくなった。

 ・また、IEEEもかっての社会貢献を高らかにうたったAIEE時代の憲章から、会員の互助会のようになってしまった。

 ・電力システムは、規制・燃料・通信・事業・マネーのネットワークからなるが、それを無視して自由化が進んだ。

 ・その結果、電力機器製造業も衰え、電気系の教授や学生も減り、かって世界を指導した米国電力事業は輝きを失った。

Ⅱカサッザ氏の提言(主要ポイント)

①電力政策は常に経済的側面と技術的側面を対等に扱えるよう審議会や委員会を構成すること。

②問題に対する一般大衆の理解を深めるための教育が不可欠。また、メディアの中立性も不可欠。

③電力政策の失敗を政府並びに企業が組織記憶をすること。

④大学教授の選考基準は教育能力を第一とする。

⑤電力技術者のプロフェション回帰。特に「一般大衆に職業上の責任を負っているとの自覚」。

Ⅲ米国の電力事業の浮沈から学ぶこと

①系統の安定:各瞬時の同時同量の確保が必要だが、再生可能エネが増えて変動が増大している。また入札制度では長期的設備形成や保守点検費用確保、技術力確保等が難しくなるため、それらの問題を組み込んだ制度設計が必要。

 ②無駄の排除:入札制度では減価償却の進んだ老朽機が優先、高効率最新機が低稼働になる不合理があり、対策が必要

 ③料金の安定:入札制度ではその時点時点での最高価格の発電単価が使用されてしまう(従来は平均単価)。また、固定買取制度で既に年間の支払が1兆円を超過。今後も増え続けるため対応が必要。

 ④エネルギーセキュリティーの確保:制度の変更がエネルギーシステムに大きな変更を与える。エネルギーの貧弱な我が国では、制度の変更がエネる技確保の能力低下をきたさない対応が必要。

Ⅳ「電気の時代」における教育問題について

「電気の時代」は多くの技術者が苦労を重ね技術開発してきた賜物である。関連技術を含め電気技術をしっかりと維持し色々な環境変化にも対応してさらに発展させるため多くの技術者の絶え間ない努力が必要。このため、大学、研究機関、産業、学会、官庁が連係して教育に力を入れるとともに、社会に対して職業上の責任を負っているとの自覚が必要である。