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定例会講演概要

災害に強い地域主導のエネルギー供給ネットワークの構築

~ シュタットベルケに見る地域密着型社会サービス ~

早稲田大学 理工学術院

名誉教授 横山 隆一

 (2016年2月23日講演)
  自然災害に起因する
大規模な電力不足を経験したことにより、家庭、事務所、工場、地方自治体は、電力会社に全面依存しない自前の電源を確保しておくことの必要性を痛感した。そこで、再生可能エネルギー有効利用への期待が大きいが、太陽光や風力発電等を用いた電源を大量に導入すると,その発電出力の変動が電力ネットワークに影響を与え、電力品質(周波数、電圧)を悪化させることが懸念され、新たな電力供給社会インフラの考え方が必要となる。特に、地域自治体が主体となる地産地消型電力供給システムの開発においては、大規模で高価なネットワークを一度に作るのではなく、地域や市街落特性に合わせた適正規模の供給ネットワークを作り、必要に応じて随時のネットワ-クを増設し、相互間を連結してゆくという方式が適している。このような地域自治体所有の「おらが村発電所」を中心に、行政機関、病院、警察、学校、避難所、通信基地、高齢者住宅を完備すれば、大規模な自然災害時にも必要とするライフライン(電気、水、通信)が確保できる。この能力は「Resiliency:回復力」とよばれ、今後の社会インフラ構築の指針となってくる。この考えは、今進められている東北の被災地の復興にも活用されるべきことを述べた。一方、日本では、2016年に電力の小売り全面自由化が予定されているが、どのような発電事業者が市場で生き残り、どのような市場が構成されるかは不透明である。先行事例として、1998年に全面電力自由化に踏み切ったドイツを見ると、4大電力会社と競争市場では不利と予想された地元電力会社約900社がしのぎを削っている。このような地元電力会社は、シュタットベルケと呼ばれ、19世紀以降、民間や個人では対応できない電力、ガス、熱、水道、交通といったインフラの整備と運用をおこなう公共サービス事業体である。我が国でも、20153月に()シュタットベルケジャパンが会社設立され、地域での再生可能エネルギーの活用や雇用の創出など地域への貢献を図っている。地方自治体では、人口減少による過疎化や税収減少、少子高齢化による農業・林業・水産業等の第一次産業の衰退、公共施設やインフラ設備の老朽化など多くの問題が顕在化している。我が国でも、電力会社に全面依存しない地域主体の社会インフラの構築が望まれており、地域ニーズに合致したエネルギーサービスと再生可能エネルギー地産地消を目指すシュタットベルケ型事業体を展開し、地域に密着したエネルギーサービスを実現することができれば地域経済の活性化が期待できることも述べた。