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定例会講演概要


回転電気機械の系譜
  

              矢田恒二
(2016年1月28日講演)


 筆者による上記表題の著作の紹介を行った。この書籍は人類が磁気・電気を意識した頃から書き起こし、ヨーロッパで確立された電気技術が我が国にもたらされた
19世紀末までの回転電気機械の技術史である。ここではこの中からエルステッドが電流と磁気の関係を発見した1820年から直流機械がどのようにして発展してきたかを紹介した。

コペンハーゲン大学にいたエルステッドの発見は瞬く間にヨーロッパの物理学者の間に知れ渡ったが、特にフランスに於いてアラゴ、アンペアなどにより電流、磁気、力の関係が理論的に整理されたのはよく知られている。しかし直流機械の初期のモデルはドイツのシュバイガが作った検流計に求められる。これはその後電流計へと展開されるが、電動機への道筋を付けたのはハンガリのイエドリックであった。彼は整流器の発明者でもある。

一方、フランスでの理論研究はイギリスのファラデイの精緻な実験で補強されて電磁誘導の発見に結びつき、さらにスタージョンの電磁石の開発につながる。このことは電気によって強い力が得られることの発見であり、電磁石による力学的利用の試みが様々に展開された。当時の原動機は蒸気機関であった事から、電磁石による吸引力はクランク運動によって回転動力を得る方向に注力されいろいろな方法が開発された。それとは別に電磁吸引力を利用して回転運動を直接実現する方法も追求された。それは吸引力が働く距離が小さい電磁力の特性を、慣性力を利用して補うものであった。しかしこの時代の電源は電池であったために、電磁石を使った原動機の運転時間には限界があった。

この欠点を補う物として電磁誘導を使った発電装置が考え出されるが、それはアンペアの実験をヒントにピクシが作ったのが最初とされる。しかしここでの発生電流は交流であった。当時は交流の用途はなかったために、これを直流に変換する装置として整流器を必要としたが、電動機で使われたイエドリックの考えた整流器とは別の形式が考えられた。そして多くの試みがなされたが、今日のような整流子の形態になる迄には1870年のグラム迄待たねば成らなかった。ここでの発電機の界磁極は馬蹄型磁石から始まり、二極界磁方式を基本にした物が主流であった。そして電機子の形態もポール型方式が試みられている。そのような開発の中で自励発電機方式が考え出され、直流発電機の基本技術が整った。

グラムはパチノッチが1864年に考えたリング型の鉄心構造による電機子と、その巻線方法を確立したこと、それに発電機と電動機の互換性を発見したことで知られるが、互換性に関しては必ずしもグラムの業績とはいえない。しかしこの知見は電磁石の吸引力をよりどころにして開発されていた電動機に新たな発展の道筋を付けることになった。一方、リング型電機子は磁気効率と、電機子の冷却に難点があり、これを避けるための種々の試みがされたが、アルテネックが考え出した円筒型電機子によってその後の直流機械の基本構造が定まったといえる。

直流による発電技術の確立は当初は照明用電源としてエジソンによる配電事業が商業化されたが、別途開発された交流発電技術に其の役割が交代させられる。しかし、直流発電機の開発と供に確立された直流電動機技術は電気鉄道にその用途を見いだし、19世紀末から始まった電気鉄道事業の発展に貢献した。


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