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2015年セミナー講演会講演要旨

2015年セミナー講演会講演要旨

電気鉄道における車両用モータの技術動向

IEEJプロフェッショナル 松岡孝一

1.電気鉄道の歴史

 鉄道は18世紀後半にヨーロッパの炭鉱で木製レールを鉄製レールに置き換えたのが始まりと言われている、1765年に蒸気機関が発明され、1825年にイギリスで蒸気機関車による鉄道の営業運転が開始された。その後暫くの間蒸気運転の時代が続いたが、1879年にベルリン博覧会にて直流電気機関車による3両の客車牽引が行われ、1881年に世界初の営業路面電車がベルリン近郊で開業した。

2.電気車の種類と電気方式

 電気車にはエネルギー源を搭載する方式もあるが、外部から電気エネルギーを供給する(集電する)方式が電気鉄道である。電気方式には直流60075015003000V、交流6.616202550kVなどがある。

3. 電気車の制御法とその変遷

 直流電気車には直流電動機の抵抗制御が永年用いられてきたが、パワーエレクトロニクス技術の進展により、界磁チョッパ制御、電機子チョッパ制御、界磁添加励磁制御などが出現し、現在では交流電動機のインバータ制御が主流となっている。

交流電気車においては、三相交流集電による誘導電動機駆動、低周波単相交流集電による交流整流子電動機駆動の時代を経て、商用周波単相交流を集電し、整流器により直流に変換した後直流電動機を駆動する方式へと発展している。タップ制御、サイリスタ位相制御方式を経て、現在ではPWM整流器とインバータによる交流電動機駆動が主流となっている。

4.主電動機の構造と技術動向

4.1 直流機から誘導機へ

 直流電動機は整流子とブラシという摩耗部品があり、保守に手間を要した。1980年代に車載可能なインバータが開発され、主電動機として誘導電動機が用いられるようになった。これにより、主電動機の保守低減と大幅な小形軽量化が達成された。

4.2 誘導機から永久磁石同期機へ

 パワーエレクトロニクス技術の進展によるインバータの小形化と、希土類を用いた高性能永久磁石の出現により、誘導電動機に比べて高効率で、小形軽量となる永久磁石同期電動機が鉄道車両にも適用可能となり、地下鉄を中心とする一部の車両に用いられるようになった。鉄道車両用永久磁石同期電動機の研究開発は1990年頃より鉄道総合技術研究所を中心に開始され、当初は直接駆動方式の開発を目標に各種試作試験が行われた。1998年にはこれを用いた軌間可変試験電車が完成し、高速耐久走行試験が行われた。海外においても研究開発が進み、都市鉄道や高速鉄道に採用されつつある。

4.3 開放形から全閉形へ

 主電動機は小形軽量化の要求が高いため、冷却性能に優れた開放形強制通風方式が採用されている。然しながら冷却風に含まれる塵埃が機内に堆積するため、定期的な分解清掃が必要であり、冷却ファンからの騒音も発生する。これらの問題を解決するため、全閉形の主電動機が開発され、一部で採用されるようになった。全閉形とするためには高効率な主電動機が必要となるが、永久磁石同期電動機はこれに適している。

     前(株)東芝 鉄道システム統括部 車両システム技術部

     元(財)鉄道総合技術研究所 電気動力研究室