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2015年セミナー講演会講演要旨

【講演概要】

リチウム電池に関する研究開発の現状と将来への期待
                                

佐野 光夫
                                 
○ 近年リチウム電池は、携帯情報端末やEVなどの電源として、幅広く使用されて
いる。このようにリチウム電池が普及した理由は、他電池と比較しエネルギー密度が大きく確保できることや、
充放電効率が良いこと等の優れた性能から、大容量の電力エネルギーをコンパクトに省スペースで蓄電できることによるものである。
  一方リチウムは非常に活性な金属であるので、リチウム電池においても他物質との反応による 発熱等の安全性に関わる現象をこれまで引き起こし、安全性の向上が課題であった。またリチウム電池の大容量化の研究開発を進める過程で、一層の長寿命化と低コスト化が求められるようになり、リチウム電池の研究開発は、このような課題を中心に取り組みが鋭意進められてきている。

○ 安全性に関わる現象は、過充電、過放電、内部短絡等による異常加熱が要因であ
り、現在ではこれらを防止するため、過充電、過放電に対しては外部の保護回路により制御し、内部短絡により発熱するとセパレータが溶融して、正負極間をシャットダウンする等の対策がなされ、安全性は著しく向上している。
 さらに抜本的な対策として、電極、電解質の高温安定性を求める取り組みも進められている。特に電解質において、可燃性の有機液体から固体電解質への移行を中心に、多種の電解質の高性能化が検討されており、今後安全性は一層向上するものと思われる。

○ 長寿命化に関する取り組みは、電池の劣化要因の解明とその対策の追求から進め
られている。すなわち充放電の繰返しによるサイクル劣化については、電極の電解質への溶出や電解質の電気分解等により劣化が進展することが解明され、充電電圧を規制値より下げて充電する等で劣化を防止する対策がとられている。
 また高い充電状態や高温保存による保存劣化については、電極表面の変質によりリチウムイオン数が減少したり拡散不足が起きたりすることが原因と判明し、電極表面処理等の対策が確立しつつあり、このような研究の積み上げで、今後より長寿命の電池が実現するものと思われる。

○ 低コスト化については、すでに広く普及している小型リチウム電池において、部
材の低コスト化や製造プロセスの合理化等によりかなり進んでおり、将来的には大容量のリチウム電池においてもそのニーズが一層高まれば、同様の量産効果による低価格化が実現するものと思われる。
 さらに抜本的な低コスト化の方策として、高エネルギー密度化を実現するために、高電圧化や電池構造を見直した、次世代二次電池と言われるリチウム空気電池の研究開発等が鋭意推進されており、早期の実用化が期待されている。

○ 現在全地球規模で温暖化防止対策として低炭素社会の構築を目指し、排出ガスの
低減、再生可 能エネルギーの活用、機器類の省エネ化等の諸方策が展開されている。特に排出ガスの大半を占める自動車の分野では、EV,HVの普及が進み、移動タイプのリチウム電池の適用が急増している。さらにこのような傾向は、鉄道、船舶の分野にも広がりを見せている。
 一方太陽光や風力のような再生可能エネルギーを利用した分散型電源も、著しく増加してきているが、このような出力不安定な電源の系統連系にともない、出力の安定化と電力貯蔵の必要性が高まり、変電所等に蓄電システムを設置する実証試験も各所で行われている。
 またリチウム電池の特長を活かし、小型エンジン発電機や無停電電源装置、産業用機器等の分野においてもその適用が拡大する状況となっている。今後リチウム電池の高性能化が一層進み、より使い勝手の良い電池が開発されれば、医療介護や防災機器への適用等、応用範囲はさらに広がっていくものと思われる。
 リチウム電池は、このような多方面での利用が高まれば、将来的には社会インフラの一部を担う重要な電池として発展するであろう。