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定例会講演概要

知的財産権訴訟における新しい専門委員制度
      

(2014年9月18日講演)
電気学会プロフェッショナル 森末道忠

 近年極めて関心が高くなった特許に絡む知的財産権訴訟において、世界に例を見ない日本独自の専門委員制度が、制度の制定当初から実際にその委員として携わってきた筆者の経験をもとに、説明されている。
 そもそも知的財産権は、一国の経済をも左右するけん引車の一つであって、それに関連する訴訟は近年熾烈さを増し、その分野も最先端技術を含んで多岐にわたっている。国はその対応策として、2003年に民事訴訟法を改正して特許権等に関する訴訟の専属管轄化を図り、専門委員制度を導入して裁判の審理判断の適正化と処理の迅速化を進めた。
 この講演は、二部に分かれており、第1部では知的財産権訴訟についての一般的な事項、第2部では専門委員制度についての実状を詳細に述べた。

第1部・・・裁判で取り扱う知的財産権は①技術型(特許権、実用新案権等)と②非技術型(商標権、著作権等)の二種類があり、訴訟には①民事訴訟(知的財産権に対する損害賠償と侵害行為の差し止め)と②行政訴訟(特許庁による審決取消し)の二つがある。民事訴訟の例としては①青色発光ダイオードに関する訴訟のような会社従業員の職務発明に関する訴訟と②スマートホンをめぐるアップル社とサムスン社との会社間の特許侵害訴訟がある。
 現在の各国における国内特許出願数、国際特許出願数、また会社間の知財関連訴訟件数を示して中国の台頭と日本の伸び悩み傾向を示した。さらに、日本の知的財産高等裁判所の概要を述べ、その設立の経緯や構成、また訴訟の処理件数が審決取消訴訟では年間400件~450件、民事訴訟では100件余りである現状を示した。

第2部・・・専門委員の目的は、訴訟における「争点整理などの手続き」に際し、裁判官や当事者に対し争点になっている専門的技術について「説明」を行うことである。専門員の身分は非常勤の国家公務員で、総勢約200名(2014年1月)、大学教授(含OB)、官民の研究者、弁理士などから選任されている。専門委員の事件への関与は、裁判所から当該事件の技術分野を専門とする委員に関与の意向打診があり、受諾の上は被告・原告当事者の意見を踏まえて決定される。事件の関与が正式に決定されると「事前準備」として当事者間の訴訟記録の写しが専門委員に送付され、委員はその多量の受付資料を精査して、①争点の明確化と②争点についての必要な証拠調べを行う。この場合、特許訴訟においては出願当時の技術常識と特許の進歩性や新規性の判断が必要になる。そして「弁論準備手続期日」(技術説明会)に出頭して、裁判における争点の明確化と円滑な進行を図るため専門的な技術について「説明」を行い、裁判官や当事者にたいしてアドバイザーの役目を果たす。この結果裁判官は判決についての心証を得て、後日判決が言い渡される。なお技術説明会は、裁判官、調査官、専門委員(2~3名)、原告・被告の関係者(弁護士、弁理士、技術者等)から構成され、当事者からの技術内容などの説明や主張、それについての質問や討論が行われる。

以上のように専門委員制度の詳細を説明し、今後電気学会プロフェッショナルの一つ課題として、知的財産権についての啓蒙活動の推進があることを述べた。