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2014年セミナー講演会講演要旨

太陽光発電システムのノイズ対策・雷害対策


オリジン電気株式会社 大島正明


  気候温暖化に代表される地球環境問題や化石燃料価格の高騰を背景として,太陽光,風力などの再生可能エネルギーに対する関心が世界的に高まっている。日本では,2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う電力不足も重なり,同年夏に再生可能エネルギーの利用を促進するための法律が成立して,2012年7月1日から施行されている。
 太陽光発電および風力発電などの自然エネルギー発電には,・燃料不要,・国産エネルギー,・発電時温暖化ガス無生成,などの特質があるので,環境問題からだけではなく,エネルギーセキュリティの観点からも大切な技術なのではないかと考えられる。
 太陽光発電には現状,応用的側面から次の課題が指摘されている。
(1) 電波ノイズ発生の防止
(2) 落雷への対応
 (1)は,太陽電池パネルやその集合体であるアレイがアンテナとなって,周囲に妨害電波を放射する現象である。これによって,ラジオや電話への雑音の混入,アマチュア無線の交信困難などが発生している。また,太陽電池アレイは屋外に設置されるので,落雷の危険に晒されるのが普通である。このため,落雷に対して適切な技術的対応が必要である。
 電波ノイズは,電池アレイの対地電位がインバータのスイッチングによって高周波で変動することによって発生する。その振幅は直流リンク電圧なので,大きい。電池アレイの金属製フレームは接地されるので,アレイには大地に対して静電容量が存在する。さらに,PCSとアレイとを結ぶ直流ケーブルにも対地静電容量がある。このため,大地をコモンモード電流が流れ,それによって電波ノイズが周囲に放射されることになる。
 この電磁放射を抑制するには,大地を流れるコモンモード電流を減らせばよい。具体的には,インバータの直流回路と交流回路との間をコンデンサで高周波に対して短絡する。これによって,コモンモード電流の大部分がコンデンサを流れ,大地を流れる量を大幅に減らすことができる。この対策のほか,コモンモードチョークコイルの追加など,通常採られる対策も勿論有効である。
 太陽電池アレイは屋外に設置されるので,常に落雷の危険に晒されている。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が行った調査では,太陽光発電システムの落雷被害確率は1~2 %であり,そのうち40 %がパワーコンディショナに関するものであると報告されている。
 電気機器への落雷現象は通常,直撃雷と誘導雷とに区分される。直撃雷とは大気から機器に直接落雷することであり,誘導雷とは機器周辺に落雷することによって雷電流が流れ込んだ大地または導電体に生じた高い電位が,接続された電線を介して機器内部に侵入することである。直撃雷を受けたときには通常,物理的破損を避けることができないため,直撃雷による被害を防止するには,直撃雷そのものを避ける以外に方法がない。したがって,近くに受雷突針(避雷針)を立て,機器をその保護範囲内に収める必要がある。太陽光発電の場合には,アレイ上に受雷突針の影ができると発電出力が影響を受けるので,突針の影に対する配慮が必要である。
 誘導雷の場合,高電位侵入のメカニズムには次の3種類がある。
a.電線で繋がった周辺機器に落雷したことによって,電線を通じて侵入する。
b.付近の大地に雷電流が流れ込んだため,大地電位が上昇し,機器の接

地線から高電位が侵入する。この場合には,機器全体の電位が上昇するので,電位の安定している電線が繋がっていると,内部に大きな電位差が発生する。
c.落雷したことによって周辺にある導体(例えば,接地線)に大電流が
流れると,周辺に高電磁界が発生する。その近くを走る電線には電圧が誘導されるため,その電線が繋がる機器に高電位が侵入する。
いずれの場合においても誘導雷は,機器に繋がる電線(電源線,信号線,アンテナ線,接地線など)を介して内部に侵入する。侵入そのものを排除することは一般に困難であるから,侵入した場合に機器を損傷させないための工夫が必要である。その場合,原則となるのは,誘導雷が侵入しても内部に危険な電位差を発生させないということである。具体的には,
イ.回路の必要部分にサージ防護デバイス(Surge Protective Device:
SPD)を設置して,機器内接地ライン(FGと呼ぶ)からの電位上昇を部品の雷インパルス(衝撃)耐電圧以下に抑制する。即ち,SPDによって機器内部に高い電位差が発生するのを防止する。
ロ.電線で繋がる周辺機器との間は,接地ライン同士も導体接続し,接地
ライン間の電位差発生を防ぐ。これを等電位ボンディングと言う。その共通接地ラインは,1点で太く短く大地に落とす。
機器の感電防止を主たる目的とするA種接地,C種接地,D種接地も等電位ボンディングに含めてよい。接地線電流が大きい可能性があるB種接地と繋ぐ必要がある場合には,接地間ボンディング用SPDを適用する。
 雷害対策の基本的な考え方は,太陽電池アレイのフレームおよび接続箱金属ケースの接地線をパワーコンディショナのFG端子と電線で接続し,接地する。さらに,SPDを太陽電池アレイの出力側,パワーコンディショナの直流入力側および交流出力側に設置する。太陽電池アレイ出力側のSPDは,接続箱の中に置くことが多い。
 今後,益々の普及が見込まれる太陽光発電システムについて住宅用を中心に,そのノイズ対策および雷害対策を説明した。太陽光発電システムの信頼性は,これらの対策が確実に実施されるが否かが大きな影響力をもつと考えられる。太陽光発電システムの健全な発展のために,少しでもお役に立つことができれば,筆者の喜びとするところである