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連携セミナー講演


持続可能な社会に向けたエネルギーのあり方について

IEEJプロフェッショナル

副代表  深川 裕正

「持続可能な社会」とはどのような社会なのかについて若干の考察を行った後、昨今の異常気象の状況を振り返りつつ地球環境悪化の現状を紹介し、その要因を「95100%人間の行為によるもの」としたIPCCの報告を参照しつつ論じた。さらに先進国では、異常気象への対応として、地球環境を少しでも改善するために温暖化ガスを減らす「緩和策」ばかりでなく、地球環境が悪化しても生存して行けるよう「適応策」を検討し、各種対策がとられ始めている。一方、今世紀末に海面が最悪で65cm上昇し、砂浜の80%が消失、高潮のリスクが高まると予測されている我が国では、「東日本大震災」の復興に当り、「適応策」が全く反映されていない現状を指摘し、自然との共生を図る新たなライフスタイルを模索すべきであると提案した。

次に日本が取り組むべき地球環境改善策として、全体の約40%の温室効果ガスを出しているエネルギー分野で考えねばならないが、「福島ショック」により原子力ルネサンス論が崩壊した今、ただ「原発反対」を唱えるだけでなく、新たなパラダイムを求めて、文明論的考察からのアプローチが必要である。そこで、物理学者ジェレミー・リフキンが提唱した「エントロピーの法則」を参照し、歴史は「熱力学第二法則-エントロピーの増大、つまり使えないエネルギーの増大-」の反映で、時代とともにエネルギー源は入手困難になり、あらゆる文化はエントロピーの転換期に直面し、高エントロピー社会は崩壊し、低エントロピー社会に向けてライフスタイルや価値観の変更が要求される。そうなると、国民一人ひとりはエネルギー的に自立することを余儀なくされ、これまで日本が追求した高効率・大規模集中型ではなく、適切な規模の中間的テクノロジーを反映した、スマートシテイ・分散型エネルギー社会があるべき姿となる。大都会を離れ、田舎暮らしを始めた高齢者等の生活「里山資本主義」と重なってくる。しかし「シェ-ル革命」下にある今が、果して「エントロピーの法則」の予想する文明の転換期なのだろうか?国家としてそれに向かうべきか時代なのか異論もあろう。

ジャック・アタリは2035年頃世界に「超帝国国家」が出現し、「超紛争」を経て、2060年頃に「超民主主義社会」が実現すると予想している。エネルギーとは国家の存亡をかけて争奪戦が展開される資源であり、国際的な駆け引きのもと、パワーバランスがものを言う。多大な国債を抱えた日本が、貿易収支でも大幅な赤字を出し続けることになれば、日本発の世界恐慌を招き、国民が路頭に迷うことにもなりかねない。それを防ぐためにも原発の再稼働は必須であろう。安全神話の虜になっていた日本の原子力が「人間の造った技術である限り完璧ではない」という謙虚な気持ちの上で、福島原発トラブルを徹底的に見直し、「リスクマネジメント」から「リスク危機マネジメント」へ考え方を変えるとともに、放射性廃棄物処理処分等に関する技術開発を進め、人材育成に努めて行くことが望まれる。